乳がんについて
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ここでは乳がんの基礎知識について簡単に解説します。
【乳がんは増えているのでしょうか?】
・わが国の乳がんは世界的にみると罹患率、死亡率とも低いものの、欧米では共に減少傾向であるのとは対照的に増加が著しい癌です。罹患率は毎年約5%ずつ上昇し、過去30年で5倍に増加しています。
・わが国の女性の癌において、罹患率1位、死亡率5位の癌です。
・現在、日本人女性の12人に1人が乳がんになる時代と言われています。
・他臓器の癌と比べて若年で発症することが大きな特徴であり、罹患のピークは40歳台後半で、死亡のピークは60歳台前半です。
【どのような人が乳がんになりやすいのでしょうか?】
・乳がんのリスクは以下のような場合に高くなります。
① 乳癌の家族歴や既往歴がある、速い初経、遅い閉経、少ない出産・授乳経験
② 遺伝子異常(BRCA 1 / 2 遺伝子の異常)がある
③ アルコール、喫煙、肥満などの生活習慣がある
④ ホルモン補充療法をしている
逆に、運動習慣は予防に働きます。
【どうやって早期発見できるのでしょうか?】
・乳がん検診を定期的に受診することが必要です。
・わが国の乳がん検診(マンモグラフィ住民検診:対策型)の受診率は、全国平均で16.3%と報告されています。これに自身で任意に受ける任意型検診の受診者を加えると、全国平均で31.4%程度と推察されます。しかし、乳がん死亡率が減少している欧米での受診率は70~80%であり、十分な社会的効果を得るためにも乳がん検診受診率の向上を図る対策が急務であると考えられています。
【どんな内容の検診を受ければいいのでしょうか?】
・乳がん検診の画像診断としては、乳腺濃度が高い若年者には超音波検査が有効
・40歳代には最近、日本発の最新結果でマンモグラフィに超音波検査を併用した方が有効であることが証明されました。
・現時点では非造影MRIやFDG-PETによる乳がん検診は勧められないと言われています。
【乳がんはどこに出来るのでしょうか?】
・乳癌は、乳管(乳汁を運ぶ管)から発生するものが約90%で、
小葉(乳汁を作る場)から発生するものが約5~10%です。
・発生部位は、乳房の外側上部(C領域)が最も多く約50%です。
次いで内側上部(A領域)が約25%で、外側下部(D領域):約13%、
内側下部(B領域)と乳輪部(E領域):約6~7%です。
【乳がんの症状にはどのようなものがあるのでしょうか?】
・見た目でわかる乳房の異常所見として、皮膚のくぼみ、硬化、ただれ、赤み・ほてり、表面の凹凸、静脈の怒張など、乳房の突出したしこり、乳頭からの分泌、乳頭の牽引、乳房内のしこり、左右サイズの変化などがあります。
・本人が訴える主訴としては、腫瘤が最も多いです。
【乳がんの進行度はどのように分けられるのでしょうか?】
・しこりの大きさ(T)、リンパ節転移の有無(N)、遠隔転移の有無(M)で分類します。(ステージ(病期):0~IV)
・0期は非浸潤癌(乳癌が発生した乳腺の中にとどまっているもの)
・IV期は他の臓器へ遠隔転移しているもの です。
【乳がんの治療方針の決定にはどのような検査が必要なのでしょうか?】
・乳腺内での乳癌病巣の広がり診断が手術法を決定するうえで重要です。
・造影MRI検査が広がり診断に対して最も適した診断法です。
・遠隔転移の診断には、造影CT検査や骨シンチ検査が有用です。
・治療法の決定には、癌の性質、サブタイプの同定が重要です。
サブタイプは本来は遺伝子の発現解析によってなされますが、現在は組織染色法によるホルモン受容体(ER, PgR)、HER2受容体、Ki67によってなされています。術前抗癌剤で治療を開始する場合にはサブタイプの同定が必須となります。
☆ホルモンレセプター(ホルモン受容体)
ER :エストロゲン受容体の発現
PgR:プロゲステロン受容体の発現
☆HER2:HER2蛋白の発現
⇒・ホルモン受容体の発現があるかないか、
・HER2蛋白の発現があるかないか のサブタイプに分けて治療方針を決定します。
サブタイプの種類
1. ホルモン受容体発現がある+HER2蛋白発現がない (Ki67:低値)
2. 1)ホルモン受容体発現がある+HER2蛋白発現がない(Ki67:高値)
2)ホルモン受容体発現がある+HER2蛋白発現がある
3. ホルモン受容体発現がない+HER2蛋白発現がある
4. ホルモン受容体発現がない+HER2蛋白発現がない
それぞれのサブタイプ別に以下のように分類し、治療法が推奨されています。
サブタイプ別の治療法
1. ルミナールAタイプ:内分泌療法単独
2. 1)ルミナールBタイプ(HER2陰性):内分泌療法±化学療法
2)ルミナールBタイプ(HER2陽性):化学療法+抗HER2療法+内分泌療法
3. HER2陽性タイプ:化学療法+抗HER2療法
4. トリプルネガティブタイプ:化学療法
乳がんは早期に発見し治療できれば治癒可能な癌です。
まずは毎月の自己触診を継続し、年1回の専門医療機関における乳がん検診を受けてください。
何か気になることがあれば一人で悩まずにすぐに専門医師にご相談ください。
男性乳がんについて
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・日本では全乳癌の0.4~0.5%と報告されています。
・好発年齢のピークは71歳であり、女性の好発年齢(40歳台後半)より高齢です。
・危険因子としては、①家族歴、②遺伝因子、③慢性肝疾患、④高エストロゲンを呈する睾丸疾患 などがあります。
・組織像では女性より浸潤性乳管癌の割合が多く、90%を占めると言われています。
・女性の乳癌に比して、エストロゲン受容体陽性率は80~95%と高く、HER2陽性率は2~15%と低いです。
・治療法としては、ホルモン感受性陽性症例では術後内分泌療法としてタモキシフェンが標準治療です。
・化学療法は乳癌診療ガイドラインにおいて女性乳癌症例に準じた治療が推奨されています。
・予後は女性と同等であると報告されています。
乳腺外来
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【乳がんの現状と早期発見の重要性】
現在、日本女性の約12人に1人が乳がんになる時代です。また、その割合も年々増加傾向にあります。30歳代から増加しはじめ、40歳代後半から50歳代前半でピークになります。
しかし、診断技術や医療の進歩により、乳がんは非常に早期に発見できるようになりました。早期発見・早期治療により、乳がんは治癒できるのです。
そのためには定期的な検診受診の継続と日頃の自己検診、そして気になることが発生した時にすぐに専門医療機関を受診することが重要です。
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・エコー(超音波)検査
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