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【No.11】高濃度乳房(デンスブレスト)について

昨今、高濃度乳房に関する話題がニュースなどで取り上げられていますので、みなさんご存知かもしれませんが、詳しく解説したいと思います。

◇1.乳腺濃度とは?
乳房は乳腺組織、脂肪組織、皮膚、乳頭、乳輪、血管などから構成されています。
マンモグラフィでは、乳腺組織は白く、脂肪組織は黒く写ります。
よって、個人の乳腺組織と脂肪組織の割合によって、マンモグラフィでの白と黒の部分の比率が決まります。
白い部分を乳腺濃度と言います。白い部分が多いと乳腺濃度が高いと表現されます。あくまでもマンモグラフィだけで使用される言葉です。

◇2.乳房の構成とマンモグラフィの関係
マンモグラフィでは、乳腺組織と脂肪組織の割合と分布を「乳房の構成」として評価し、4つのタイプに分類します。
1. 脂肪性:乳房内がほぼ脂肪組織で占められています。マンモグラフィでは、乳房全体が黒く写ります。
2. 乳腺散在:脂肪組織内に乳腺組織が散在している(脂肪組織が70~90%)状態です。マンモグラフィでは、黒い部分と白い部分が混在していますが、黒い部分が多く写っています。
3. 不均一高濃度:乳腺組織内に脂肪組織が混在し、不均一な濃度を呈しています(脂肪組織が40~50%)。マンモグラフィでは、黒い部分と白い部分が混在していますが、白い部分が多く写っています。
4. 高濃度:乳腺組織内に脂肪組織の混在がほとんどない(脂肪組織が10~20%)状態です。マンモグラフィでは、乳房全体がほぼ真っ白に写ります。

◇3.高濃度乳房では病変が見つかりにくい
不均一高濃度と高濃度を合わせて、高濃度乳房(デンスブレスト)と言います。マンモグラフィでは、乳がんを含めたしこりは白く写るため、高濃度乳房では発見しにくくなります(雪山で白ウサギを探すようなもの)。

◇4.高濃度乳房は病気?
乳房の構成は、年齢や人種、ホルモン補充療法(HRT)、妊娠・授乳などで変化します。
高濃度乳房は、欧米人に比べてアジア人(日本人)に多く、高齢者に比べ若年者に多い傾向にあります。
日本人の約40%が高濃度乳房であると言われています。よって、高濃度乳房は個人の乳房の個性(体質)であり、決して病気ではありません。このことから、検診では高濃度乳房であるだけでは要精査にはなりません。当然、追加検査(エコーなど)も保険対象にはなりません。

◇5.高濃度乳房と乳がんの発生リスクはある?
高濃度乳房では乳がんの発生リスクがやや高くなると言われています(約1.2倍)。
その一方で、高濃度乳房の少ない肥満女性に乳がんが多かったり(理由は脂肪内でエストロゲンが産生されるため?)、高濃度乳房の多いアジア人女性に乳がんが少なかったり、高濃度乳房では乳がん発生リスクが高くなることと矛盾する事実もあります。つまり現時点では、高濃度乳房と乳がん発生リスクの関係はまだ良く分かっていません。

◇6.高濃度乳房を知らせるべきかどうか?
最近、マンモグラフィ受診者の乳房の構成、特に高濃度乳房について、その個人に知らせるべきかどうかが問題になっています。
ただ、①高濃度乳房の判定基準が確立していない、②高濃度乳房と知らせても、その後どうすべきかのコンセンサスがない状況ですので、知らせるにはまだまだ問題があります。その一方で、高濃度乳房を含めた乳房の構成は、個人の知る権利でもあります。
受診者の乳房の構成を知らせるかどうかについては、これからの論議がまだまだ必要と考えます。

◇7.高濃度乳房に対する追加検査について
高濃度乳房への対応として、乳房エコー検査、乳房3Dマンモグラフィ検査、乳房MRI検査などがあります。
日本発の研究(J-START)で、デンスブレストが多い40歳代女性に対して、マンモグラフィにエコー検査を追加することにより、乳がん発見率、早期乳がん発見率、感度が上昇するという結果が得られています。
今後、死亡率減少効果等に関するデータを検証しながら、対策型検診として導入するかどうかを検討していく必要があります。
当院では30歳以上の患者様に対しては、マンモグラフィにエコー検査を併用する検診をお勧めしています。
視・触診、マンモグラフィ検査、エコー検査を専門医師が一貫して検査することにより、早期に乳がんを発見出来るよう日々努力しています。
是非、当院にて乳がん検診を定期的に受診され、早期に乳がんを発見し治療してください。皆様の“乳腺の主治医”として、これからもお手伝い出来れば幸いです。今後とも宜しくお願い致しますね。

2017.11.11
有本乳腺外科クリニック本町
有本 裕一

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