Breast-cancer
乳がんについて
女性に多いがん
「乳がん」
知ってほしい「乳がん」という病気
乳がんとは
高齢化で増える「がん」の中でも、乳がんは、特にその増加が著しくなっています。
当院の院長が乳腺の診療を始めた2000年頃は、一生のうちで乳がんにかかる日本人女性は24人に1人と言われていました。今は、9人に1人が乳がんにかかっています。30代後半で急増し、40代後半と60代前半にピークを迎えます。もちろん若い女性にとっても決して他人事ではありません。
早期発見で5年生存率は90%以上。ただ、息が長く、晩期再発がありますので、術後の患者様も定期的に乳がん検診を受診しましょう。
こんなお悩みは
ございませんか?
- 胸や脇の下にしこりがある
- 皮膚が赤くなっている
- 乳がん検診で再検査になった
- 胸に違和感がある
- 乳頭がただれている
- 症状はないが健診を受けたい
- 時々、胸がチクチクと痛む
- 乳頭から分泌物がある
- セカンドオピニオンを受けたい
乳がんの原因について
乳がんの直接的な原因については、まだはっきりしたことはわかっていませんが、統計的な調査によりわかっている危険因子は、次のようなものがあります。
- 出産、授乳をしていない人
- 肥満の人(閉経後)
- 喫煙、アルコール
- 成人期の高身長、出生時の体重が重い
- 早い初経、遅い閉経
- 血縁者に乳がんになった人がいる
- 乳がんになったことがある
- 良性の乳腺腫瘍になったことがある
乳がんは、早期に見つけて治療すれば、より高い確率で完全に治すことができます。乳房を温存しながら、部分切除手術でがんを取り除くことも可能です。
男性の乳がんについて
日本では全乳癌の0.4~0.5%と報告されています。
好発年齢のピークは71歳であり、女性の好発年齢(40歳台後半)より高齢です。
危険因子としては、
①家族歴
②遺伝因子
③慢性肝疾患
④高エストロゲンを呈する睾丸疾患
などがあります。
組織像では女性より浸潤性乳管癌の割合が多く、90%を占めると言われています。女性の乳癌に比して、エストロゲン受容体陽性率は80~95%と高く、HER2陽性率は2~15%と低いです。
治療法としては、ホルモン感受性陽性症例では術後内分泌療法としてタモキシフェンが標準治療です。
化学療法は乳癌診療ガイドラインにおいて女性乳癌症例に準じた治療が推奨されています。
また、予後は女性と同等であると報告されています。
乳がんの治療方針の
決定について
乳腺内での乳癌病巣の広がり診断が、手術法を決定するうえで重要となります。
造影MRI検査が広がり診断に対して最も適した診断法です。
遠隔転移の診断には、造影CT検査や骨シンチ検査が有用です。
治療法の決定には、癌の性質、サブタイプの同定が重要です。
サブタイプは本来は遺伝子の発現解析によってなされますが、現在は免疫組織染色法によるホルモンレセプター(ホルモン受容体)(ER, PgR)、HER2受容体、Ki67によってなされています。術前抗癌剤で治療を開始する場合にはサブタイプの同定が必須となります。
⇒・ホルモン受容体の発現があるかないか、・HER2蛋白の発現があるかないかのサブタイプに分けて治療方針を決定します。
ホルモンレセプター(ホルモン受容体)とは?
細胞の中で、ホルモンが作用する部分をレセプター(受容体)といいます。 ホルモンをキャッチするアンテナのようなものです。 ホルモンレセプターはホルモンが作用する部位の細胞にありますが、乳がん細胞の中にもあります。 乳がん細胞のレセプターにホルモンが結合すると、細胞の中の遺伝子の働きが活発になって、乳がん細胞が増殖します。
サブタイプの種類
- 1.ホルモン受容体発現がある+HER2蛋白発現がない (Ki67:低値)
- 2. 1)ホルモン受容体発現がある+HER2蛋白発現がない(Ki67:高値)
- 2)ホルモン受容体発現がある+HER2蛋白発現がある
- 3.ホルモン受容体発現がない+HER2蛋白発現がある
- 4.ホルモン受容体発現がない+HER2蛋白発現がない
サブタイプ別の治療法
- 1.ルミナールAタイプ:内分泌療法単独
- 2. 1)ルミナールBタイプ(HER2陰性):内分泌療法±化学療法
- 2)ルミナールBタイプ(HER2陽性):化学療法+抗HER2療法+内分泌療法
- 3.HER2陽性タイプ:化学療法+抗HER2療法
- 4.トリプルネガティブタイプ:化学療法
乳がんについて
よくある質問
- Q
乳がんは増えているのでしょうか?
-
A
わが国の乳がんは世界的にみると罹患率、死亡率とも低いものの、欧米では共に減少傾向であるのとは対照的に増加が著しい癌です。罹患率は毎年約5%ずつ上昇し、過去30年で5倍に増加しています。
わが国の女性の癌において、罹患率1位、死亡率5位の癌です。
現在、日本人女性の9人に1人が乳がんになる時代と言われています。
他臓器の癌と比べて若年で発症することが大きな特徴であり、罹患のピークは40歳台後半で、死亡のピークは60歳台前半です。 - Q
どのような人が乳がんになりやすいのでしょうか?
-
A
乳がんの発症にかかわるリスク因子については、各国でさまざまな疫学調査が行われてきました。その結果、いくつかの傾向があることがわかってきています。
女性ホルモンのエストロゲンが乳がんの発症に深くかかわっていることは、古くからよく知られていました。また、飲酒習慣、喫煙などの生活習慣もリスク因子として挙げられています。
さらに、家族(血縁者)に乳がんにかかった人がいる場合も、乳がんの発症リスクが高まる可能性があることが明らかになっています。乳がんのリスク因子
エストロゲンとの関連
- 初経年齢が早い
- 閉経年齢が遅い
- 初経年齢が遅い
- 出産経験がない
- 閉経後の肥満
- 更年期障害の治療で長期間ホルモン補充療法を受けている など
生活習慣
- 飲酒習慣
- 喫煙 など
遺伝との関係
- 血縁者に乳がんにかかった人がいる など
- Q
どうやって早期発見できるのでしょうか?
-
A
乳がん検診を定期的に受診することが必要です。
わが国の乳がん検診(マンモグラフィ住民検診:対策型)の受診率は、全国平均で16.3%と報告されています。これに自身で任意に受ける任意型検診の受診者を加えると、全国平均で31.4%程度と推察されます。しかし、乳がん死亡率が減少している欧米での受診率は70~80%であり、十分な社会的効果を得るためにも乳がん検診受診率の向上を図る対策が急務であると考えられています。 - Q
どんな内容の検診を受ければいいのでしょうか?
-
A
乳がん検診の画像診断としては、乳腺濃度が高い若年者には超音波検査が有効
40歳代には最近、日本発の最新結果でマンモグラフィに超音波検査を併用した方が有効であることが証明されました。
現時点では非造影MRIやFDG-PETによる乳がん検診は勧められないと言われています。 - Q
乳がんはどこに出来るのでしょうか?
-
A
乳癌は、乳管(乳汁を運ぶ管)から発生するものが約90%で、 小葉(乳汁を作る場)から発生するものが約5~10%です。
発生部位は、乳房の外側上部(C領域)が最も多く約50%です。
次いで内側上部(A領域)が約25%で、外側下部(D領域):約13%、
内側下部(B領域)と乳輪部(E領域):約6~7%です。 - Q
乳がんの症状にはどのようなものがあるのでしょうか?
-
A
見た目でわかる乳房の異常所見として、皮膚のくぼみ、硬化、ただれ、赤み・ほてり、表面の凹凸、静脈の怒張など、乳房の突出したしこり、乳頭からの分泌、乳頭の牽引、乳房内のしこり、左右サイズの変化などがあります。
本人が訴える主訴としては、腫瘤が最も多いです。 - Q
乳がんの進行度はどのように分けられるのでしょうか?
-
A
しこりの大きさ(T)、リンパ節転移の有無(N)、遠隔転移の有無(M)で分類します。(ステージ(病期):0~IV)
0期は非浸潤癌(乳癌が発生した乳管の中にとどまっているもの)
IV期は他の臓器へ遠隔転移しているものです。
病期0 | 非浸潤がん:乳がんが発生した乳管や小葉の中にとどまっている(パジェット病を含む) | |
---|---|---|
病期Ⅰ | しこりが2cm以下で、わきの下のリンパ節に転移なし | |
病期Ⅱ | A | しこりが2cm以下で、わきの下のリンパ節に転移あり |
しこりが2.1~5cmで、わきの下のリンパ節に転移なし | ||
B | しこりが2.1~5cmで、わきの下のリンパ節に転移あり | |
しこりが5.1cm以上で、わきの下のリンパ節に転移なし | ||
病期Ⅲ | A | しこりが5.1cm以上で、わきの下のリンパ節に転移あり |
しこりの大きさを問わず、わきの下のリンパ節に転移が強い、 または、わきの下のリンパ節に転移は無いが、胸骨の周りのリンパ節に転移あり |
||
B | しこりの大きさを問わず、皮膚や胸壁に浸潤している | |
C | しこりの大きさを問わず、わきの下のリンパ節および周りの組織、 または鎖骨の上あるいは下のリンパ節に転移している |
|
病期Ⅳ | しこりの大きさを問わず、乳房から離れたところに転移している |
遺伝と乳がんの関係性
がんを引き起こす要因には、食生活や飲酒、喫煙などの「生活環境」のほかに、親から受け継ぎ、生まれ持った「遺伝」によるものもあります。このうち、乳がんの発症に関係する遺伝子が特定されたものを「遺伝性乳がん」といい、全乳がんの約7~10%を占めていると考えられています。
なかでも最も多くの割合を占めているのが「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」と呼ばれる遺伝性腫瘍です。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群とは
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)は、「BRCA1」または「BRCA2」という遺伝子の病的な変異が、親から子どもに受け継がれることで起こります。
変異とは
変異とは、遺伝情報を伝えるDNA配列の一部が、何らかの原因で失われたり組換えられるなどして変化することをいいます。このうち病気の発症に関連する遺伝子の変異のことを「病的な変異」といいます。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群の
特徴
HBOCの方では、乳がんだけでなく、卵巣がんを発症するリスクが将来的に高まることが知られています。
また、若くして乳がんを発症しやすいことや、両方の乳房にがんを発症しやすいこと、トリプルネガティブ乳がんが多いことなど、通常の乳がんとはやや異なる傾向があります。
HBOCの特徴
- 乳がんと卵巣がん両方を発症しやすい
- 片方の乳房に複数回乳がんを発症しやすい
- 若くして乳がんを発症しやすい
- トリプルネガティブ乳がんが多い
- 両方の乳房にがんを発症しやすい
- 男性で乳がんを発症しやすい
- 家系内に乳がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がんになった人がいる など
乳がん治療の主な流れ
病期Ⅰ期からⅢ期の患者様の場合
-
Step01治療計画を立てる
病状を確認
- がんの大きさと乳房内の広がり
- 他の臓器への転移の有無(ⅡB期、Ⅲ期の方)
- がんの数・位置
- がんの性質(薬への反応性:サブタイプ)
- リンパ節転移の程度
Point患者様の希望を
尊重します同じ乳がんの患者様でも、仕事や家庭生活といった環境や生き方、価値観は、一人ひとり違います。優先したいこと、譲れないこと、希望などあれば、そのことを主治医にきちんと伝えてください。
例えば…
-
手術について
- 乳房の形はできるだけ残したい
- 1%でも再発リスクを減らすためなら、乳房切除でもかまわない
-
薬物療法について
- つらい副作用は絶対に避けたい
- 副作用よりも効果が高い治療法を選択したい
-
今後の生活
- 将来、妊娠(出産)したい
- 仕事を続けながら治療したい
-
Step02手術前の治療
薬物療法
- 化学療法(抗がん剤治療)
- 抗ER2療法
- (ホルモン療法)※行わない場合もあります
-
Step03手術
-
乳房に対する手術
- 乳房温存手術(部分切除)
- 乳房切除術(全摘)※希望に応じて乳房再建手術を検討
-
わきの下のリンパ節に対する手術
- センチネルリンパ節生検
- 腋窩リンパ節郭清
-
-
Step04手術後の治療
放射線療法
術後薬物療法
- ホルモン療法
- 抗HER2療法
- 化学療法
※行わない場合もあります
-
Step05経過観察
- 各治療完了後、経過観察を行って様子を見ます。
乳がんの手術について
標準的な手術方法には「乳房温存手術」と「乳房切除術」があります。乳房温存手術は、乳房を部分的に切除してがんと周囲の乳腺組織を取り除く方法で、整容性を重視して乳房を残します。一方、乳房切除術は、がんが広範囲に広がっている場合に行われ、がんが発生した側の乳房を大胸筋と小胸筋を残して全て切除します。手術方法は、がんのサイズ、広がり、位置、数(複数のがんがある場合)、そして患者様の希望に基づいて決定されます。
乳房温存手術(部分切除)
乳房温存手術は、しこりを含む乳腺組織を部分的に切除する手術で、ステージ0~Ⅱ期の乳がんに対する標準的な手術法です。
乳房温存手術は、手術後の乳腺の正常組織が残るため、乳房のふくらみが保たれるのが特徴です。しこりの大きさは、日本の場合3cm以下を目安としていますが、3cm以上でも、がんを完全に取り切ることができ、見栄えも良好な手術ができると判断された場合は、温存手術が行われる場合があります。また、しこりが大きくても術前の薬物療法で縮小することで、温存手術の対象となることもあります。
なお、温存手術では、温存した乳房からの局所再発を防ぐため、手術後に温存乳房に対する放射線療法を合わせて行うことが前提となります。
乳房温存手術が適応となる主な条件
- がんが比較的限局している
- がんが乳房内に多発していない
- 手術後に整容性が保てる
- 放射線照射が可能 など
乳房切除術(全摘)
乳房切除術は、がんが乳房内に広範囲に広がっている場合や、複数のがんが乳房の離れた場所にある、周囲の乳管にも広がっているなどの場合に行われる手術法です。
標準的な方法は、がんを含めた乳腺組織のすべてと、乳頭、乳輪に加え、必要に応じてわきの下のリンパ節を切除するものです。
切除術では胸のふくらみは保てませんが、乳房の再建手術を受けることで形を整えることが可能です。乳房再建を前提に(一次再建)、乳房の皮膚を残す「皮膚温存乳房切除術(SSM)」や、乳頭・乳輪も残す「乳頭・乳輪温存乳房切除術(NSM)」もあります。
腋窩リンパ節郭清とセンチネルリンパ節生検
手術前の検査で、わきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)に転移が認められた場合、リンパ節を周辺組織ごと取り除く「腋窩リンパ節郭清」が行われます。
ただし、リンパ節郭清は、術後、腕がむくむことがあり(リンパ浮腫)、患者様の生活に影響を及ぼす可能性があります。
そこで、リンパ節転移のリスクが低い場合は、リンパ節郭清が必要かを判断するために「センチネルリンパ節生検」が行われます。
センチネルリンパ節生検とは、腋窩リンパ節の中で、最初にがん細胞がたどりつくリンパ節(センチネルリンパ節)に、がん細胞があるかどうかを調べる検査です。ここに転移がなければ、その先のリンパ節への転移もないと考えられるため、腋窩リンパ節郭清は省略出来ます。ごく少ない転移があった場合も省略可能と考えられています。
センチネルリンパ節生検は比較的新しい方法ですが、信頼性が高く標準的な治療の一つになっています。
些細なことでも、まずは
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乳がんは早期に発見し治療できれば治癒可能な癌です。
まずは毎月の自己触診を継続し、年1回の専門医療機関における乳がん検診を受けてください。
何か気になることがあれば一人で悩まずにすぐに専門医師にご相談ください。
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