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院長コラム
【No.3】婦人科がんについて
女性の気になるがんといえば、乳がんと共に婦人科がんがあります。
乳がん検診と共に婦人科がん検診もとても大切です。
ここでは婦人科がんの基礎知識について簡単に解説します。
婦人科がん検診に関しては、当ビル2階の茶屋町レディースクリニックにおいて対応可能です。
同日に同時診察も可能ですのでご希望の患者様はお気軽にお申し付けくださいね。
婦人科がんは増えているのでしょうか?
主な婦人科がんとしては、①子宮頸がん、②子宮体がん、③卵巣がんがあります。
日本において、浸潤性婦人科がんの罹患率は年々増加傾向にあります(4%以上)。
婦人科がんは、進行すると死亡リスクが高まり、早期であっても妊孕性(妊娠できる可能性)を喪失させることが多いため注意が必要です。一次予防(発生予防)と二次予防(検診による早期発見)が大切です。
以下に三つの主な婦人科がんについて別々に解説していきますね。
①まず、子宮頸がんに関して解説します。
子宮頸がんとその前がん病変ですが、子宮頸がんのうち75%が扁平上皮癌です。
扁平上皮癌の前がん病変は、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)であり、CINは軽度から高度まで3段階に分類されます。CIN1の過半数は自然に退縮します。
しかし、CIN2 / 3は自然には退縮しにくく、数年~数十年後に浸潤がんに進展する危険性があります。
次に子宮頸がんの発生に関する因子ですが、日本女性の子宮頸がんの生涯罹患リスクは1.4%、死亡リスクは0.29%です。40年前と比し、50歳未満の浸潤がんの罹患率は増加傾向にあります。また最近十数年の傾向として、CIN3・AIS(腺癌の前がん病変)の罹患率は30代を中心に爆発的に増加しています。
高度の上皮内病変は、子宮頸部円錐切除術により妊孕性を温存できますが、その後の妊娠における早産のリスクが高くなります。ほとんどの子宮頸がんは、性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因となって発生します。特にHPV16型と18型はハイリスクです。
CIN2 / 3:16型=45%、18型=7%
浸潤扁平上皮癌:16型=55%、18型=13%
浸潤腺癌:16型=33%、18型=37%
さらに子宮頸がんのリスク因子ですが、
1)HPV感染リスクを高める因子:10代での性交渉、多数のセックスパートナー、多産、免疫抑制剤の使用 など
2)喫煙などが挙げられます。
ではどのように検診していけばいいのでしょうか?
日本では、子宮頸癌検診(子宮頸部擦過細胞診)が20歳以上の女性に対して2年に1回施行されています。検診により浸潤癌の罹患リスクは84%、死亡リスクは59%低下しました。ここで一時話題となった子宮頸がんの予防ワクチンについて解説します。
HPV感染を予防することで子宮頸がんを予防するワクチンとして、日本では
1)HPV16型と18型に対する2価ワクチン(商品名:サーバリックス)と
2)2価+6型と11型も予防する4価ワクチン(商品名:ガーダシル)が
接種可能です。それらによるCIN3の予防効果は80%程度です。
日本では2009年からワクチン接種が開始され、2013年から定期接種となりましたが、ワクチン接種後の全身痛や痙攣が報道で取り上げられ、厚生労働省より「積極的な接種勧奨の差し控え」が出された後は接種人口が減少しています。
ワクチンの安全性は科学的には十分証明されていると報告されています。
②次に、子宮体がんについて解説します。
子宮体がんとその前がん病変ですが、
子宮体がんはタイプ1(類内膜腺癌:約70%)とタイプ2(漿液性腺癌など:約30%)に分けられます。
タイプ1は閉経前~閉経期に生じ、特に高~中分化度の症例は早期症例が多く生命予後は良好です。
タイプ2は高悪性度であり生命予後は不良です。
タイプ1の前がん病変である子宮内膜異型増殖症のフォローアップによる類内膜腺癌発生頻度は、23~40%と言われています。
次に子宮体がんの発生に関する因子ですが、日本女性の子宮体がんの生涯罹患リスクは1.7%、死亡リスクは0.23%です。40年前と比し、罹患率は6倍以上と著明に増加しており、現在は婦人科がんの中で最も高くなっています。
さらに子宮体がんのリスク因子ですが、
1)肥満、糖尿病、動物性脂肪の摂取 など
2)乳がんに対するタモキシフェン投与 などが挙げられます。
一方、妊娠、授乳、経口避妊薬服用、運動は発生を予防します。
ではどのように検診していけばいいのでしょうか?
子宮体がん検診(子宮内膜細胞診)による子宮体がん罹患率や死亡率減少効果は報告されていません。
特に無症状者に対する有効性は科学的根拠がありません。
不正出血などの有症状者を含んだ解析で、子宮内膜細胞診により子宮体がんを検出する感度は79~95%、偽陰性率は13%と報告されています。
子宮内膜細胞診が陰性であっても、出血や帯下などの臨床症状がある場合や子宮内膜肥厚など子宮体がんを疑う場合には、子宮内膜組織診を施行しなくてはなりません。
ここでリンチ症候群について解説します。
リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん:HNPCC)とは大腸がんや子宮体がん、卵巣がんなどの発症リスクが高くなる疾患です。全大腸がんの2~5%程度がHNPCCと考えられ、HNPCCの遺伝子を持つ人の約80%が生涯の間に大腸がんを発症します。
また、女性では、20~60%が生涯に子宮体がんを発症すると言われています。
若年発症のがんや、大腸がん、子宮体がんなどの多重多発がんを発症している場合にはHNPCCの可能性があります。病的変異を有する場合の定期検査としては、大腸内視鏡検査を20~25歳以降は1~2年に1回、子宮内膜組織診および経腟超音波検査を30~35歳から毎年行うことが推奨されています。
③最後に、卵巣がんについて解説します。
卵巣がんとその前がん病変ですが、卵巣悪性腫瘍の内、95%は上皮性悪性腫瘍(卵巣がん)が占めます。
代表的な組織型として、漿液性腺癌(36%)、明細胞腺癌(24%)、類内膜腺癌(17%)、粘液性腺癌(11%)がありますが、これらは生物学的にも臨床的にも異なった性質を持っています。
1)漿液性腺癌:きわめて増殖・進展速度が速く、ほとんどがIII~IV期の進行症例として診断されます。
2)それ以外の組織型はI期症例が多いです。
次に卵巣がんの発生に関する因子ですが、日本女性の卵巣がんの生涯罹患リスクは1.2%、死亡リスクは0.52%です。
婦人科がんの中で最も死亡リスクが高いがんです。40年前と比し、罹患率は2倍以上に増加しています。
さらに卵巣がんのリスク因子ですが、
1)初経年齢が早く閉経年齢が遅い
2)肥満、動物性脂肪の摂取 などが挙げられます。
一方、妊娠、経口避妊薬の服用、子宮摘出、卵管結紮はリスクを低下させ、野菜や果物の摂取、運動もリスクを減少させます。
ではどのように検診していけばいいのでしょうか?
日本では前がん病変として卵巣のう腫が認められる組織型の頻度が高いため、卵巣がん検診で卵巣のう胞を検出しフォローアップすることで卵巣がんの予後が改善する可能性があると言われています。
ここで遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)について解説します。
生殖細胞におけるBRCA1あるいはBRCA2遺伝子の変異は、女性において遺伝性の乳がん及び卵巣がんを生じさせると言われています。
卵巣がんの罹患率はBRCA1遺伝子変異があると36~63%、BRCA2遺伝子変異があると10~27%になり、そのほとんどが漿液性腺癌です。
アメリカのガイドラインでは、「上皮性卵巣がん患者」というだけでBRCA1/2遺伝子検査が勧められています。
血縁者の乳がん及び卵巣がんを予防するのみならず、分子標的薬であるPARP阻害薬の有効性予測に有効だからです。このガイドラインでは、BRCA1/2遺伝子変異がある場合、35~40歳の出産終了時での予防的卵巣卵管切除(RRSO)を推奨しています。
RRSOは卵巣がん発症リスクを80%低下させ、更に死亡率も低下させます。日本でBRCA1/2遺伝子検査やRRSOを一般診療で勧めていくために、遺伝子カウンセリング体制の整備が急がれるところであります。
以上、代表的な婦人科がんである、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんについて簡単にまとめてみました。
乳がん発症と関係のある事項も含まれていますので参考になれば幸いです。
何か気になることがあれば一人で悩まずにすぐにご相談くださいね。
茶屋町レディースクリニックと連携して迅速に対応致します。