大阪で本町駅から徒歩5分にある乳腺外科クリニック

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新規開院につき1日5名様まで即日の乳がん検診が可能です
大阪市乳がん検診(超音波、マンモグラフィ)が可能です。

院長コラム

【No.4】乳がん検診の重要性について

 

一昨日、歌舞伎役者の市川海老蔵さんの妻、小林麻央さんが進行性乳がんになり闘病中であることが発表され、世間の30歳代の女性に注目されています。

“早期発見こそが最大の治療である”と考えます。ここでみなさんにもう一度、乳がん検診の重要性をアピールすべくコラムを作成しました。他人ごとではない、自分にも可能性があることを十分に認識し、精度の高い乳がん検診を定期的に受診してくださいね。

 

乳がんは女性のがん罹患率のトップです。しかも患者数、死亡数共にずっと増加し続けています。好発年齢のピークは40~50歳代であり、女性が家庭や社会の中で活躍し重要な役割を果たす年齢層において、命を落とすリスクの高い病気なのです。だからこそ、乳がん検診が非常に重要になってきます。

現在、自治体で行う乳がん検診(住民健診)は、40歳以上の女性が対象で、2年に1回、マンモグラフィ検査と視触診検査によるものです。欧米のデータを集積した解析ではマンモグラフィ検査により乳がんの死亡リスクを20%下げることができると言われています。

 

しかし現状は、乳がん罹患率が2~3倍と高い欧米で死亡率が年々低下しているにも関わらず、日本では死亡率は年々増加しています。この理由は、検診の受診率にあります。欧米で70~80%の受診率に対して、日本では住民健診の受診率が20~30%、企業検診や人間ドックなどの任意型検診などを含めても50%程度にしかすぎません。

日本の乳がん検診受診率が低い(検診に行かない)理由につき、アンケート調査を行った結果、「忙しい」「費用が高い」「マンモグラフィが痛い」「他人(医師であっても)に胸を見せたくない」「何も気になるところがない」「自分は乳がんにならないと信じている」「がんだと診断されるのが怖い」という声がみられました。この中で「費用が高い」は、大阪市検診の場合、自治体が一部負担するため1500円ですみます。また「何も気になるところがない」は、その段階で受けてこその検診であり、気になるところがあればすぐに専門医療機関を受診すべきです。さらに「自分は乳がんにならないと信じている」は、何の根拠もなく大変危険な考え方です。

 

このような個人的な理由のほかに、日本では検診を受ける動機を持ちにくいという社会的背景もあります。例えば米国では、個人が任意で医療保険に加入しているため、保険会社が医療費削減を目的に、検診費用を負担して、受診しないと保険料が高くなるという条件を付け加入者に受診を促しています。一方、日本では検診を受けなくても保険料が変わらず、また受診率が上がったとしても自治体にお金が入ってくるわけではないからです。

 

「がんだと診断されるのが怖い」という意見の通り、がんに対する恐怖は人々の偽らざる本音でしょう。しかし、がんは早期に治療するほど、治癒する可能性は高くなります。特に乳がんは治療効果が現れやすいがんです。がんが発生した乳管内にとどまっている非浸潤癌(ステージ0)では10年生存率は100%です。

早期発見によるメリットは生存率だけではありません。

① 手術:がんが小さければそれだけ乳房を残せる可能性が高くなります。

② 早期がんと進行がんでは、術後のQOL(生活の質)が異なってきます。

例えば、がんが腋窩(脇の下)リンパ節に転移すると、リンパ節も大きく切除する必要があり、生涯に渡り腕がむくむリンパ浮腫という後遺症が現れることがあります。また、進行がんでは、術後の補助療法として、ホルモン療法の他に放射線治療や抗がん剤治療が必要になり、身体的・経済的に負担が増えてしまうのです。早期がんなら多くの場合、これらのリンパ節切除や術後の抗がん剤治療を受けずに済みます。

つまり、早期の段階でがんを見つけることに検診の意義があるのです。
実際にマンモグラフィで発見された乳がんの病期を調べてみると、その80%は早期がん(ステージ0と1)でした。ちなみに、視触診による早期がんの発見は70%、自分で異変に気づき受診した場合は50%以下でした。

しかし、マンモグラフィ検査は万能ではありません。乳腺も腫瘍も白く写るため、乳腺濃度の高い日本人の乳腺内腫瘍は見つけにくいです。ただ石灰化も白く写りますが、濃度が全く異なるため異常として見つけやすく、早期乳がんの指標である乳管内微小石灰化の診断には大変有効です。

ではどのような検診を受けるのがベストなのでしょうか?

それは超音波検査(エコー)の併用にあります。超音波は乳腺の影響を受けない為、乳腺濃度が高い乳房においても腫瘤を見つけやすく、若い人に適していると言えます。また、石灰化を経ずに腫瘤を形成するタイプのがんを発見するのにも適しています。ただ石灰化の状態は映し出すことが困難です。

以上のように、マンモグラフィ検査と超音波検査はお互いの欠点を補い合うので、乳がんの早期発見には、両者を併用する検診が理想的と言えます。実際に日本発のJ-STARTという大規模研究で、40歳代の女性に対するマンモグラフィ検査に超音波検査を併用するメリット(死亡率の低下)が最近証明されました。ただこれが現在の住民健診に反映されるかどうかは自治体間格差があり、まだまだ問題があるようです。

 

いずれにせよ、まずは現在実施されている乳がん検診を受診することが大切です。さらに、乳がん検診と共に自己検診も大変重要です。まずは自分の乳房を視て触って、硬さや形、大きさ、左右差などを観察しましょう。そして月に1回、生理が終了した最も乳腺が柔らかい時期に自己検診するくせをつけましょう。何か変化があったら、乳腺外科などの専門医療機関を受診しましょう。乳がんは、早期発見し治療すれば怖いがんではありません。乳がん検診や自己検診をしっかりと行い、自分の身を守ってください。われわれ乳腺外科医が“あなたの乳腺の主治医”としてお手伝いさせて頂きます。