大阪で本町駅から徒歩5分にある乳腺外科クリニック

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新規開院につき1日5名様まで即日の乳がん検診が可能です
大阪市乳がん検診(超音波、マンモグラフィ)が可能です。

院長コラム

【No.6】甲状腺の病気について

皆さんは甲状腺の病気についてご存知ですか?甲状腺の病気は、20~40歳代の女性に多く見られ、多彩な症状が認められます。そのため、更年期障害や自律神経失調症、うつ病などの病気に間違えられたり、気のせいだとか、怠けていると誤解されてしまうこともあります。正確に診断し、適切な治療を施せば、すぐに元気になり健康な人と同じ生活が出来るようになります。何となく体の調子が悪いと感じておられる方は、一度甲状腺の検査を受けることをお勧めします。ここでは甲状腺の病気について簡単に解説します。何か気になることがあれば、お気軽にご相談くださいね。

◇甲状腺とは?:

甲状腺は前頚部(首の前)に存在し、羽を広げた蝶のような形をした15g程度の臓器です。身体にとってとても重要な甲状腺ホルモンを分泌しています。普通は体表からは触れませんが、病気になり腫れるとしこりとして触れることがあります。甲状腺は食物中のヨードを取り込んで、トリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)という2種類の甲状腺ホルモンを合成しています。健康な人では、甲状腺ホルモンの量は脳下垂体から出る甲状腺刺激ホルモン(TSH)により調節され、常時適量に保たれていますが、そのバランスが崩れると様々な症状が出てきます

◇甲状腺ホルモンの働き:

  • 体の新陳代謝を活発にし、脂肪や糖分を燃焼してエネルギーを作り出しています。
  • 交感神経を刺激し、精神や身体の活動を調整しています。

◇甲状腺の病気の種類:

甲状腺の病気は沢山ありますが、①機能の異常(亢進症と低下症)と②腫瘍(良性と悪性)に分けられます。

  • 1) 甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンの分泌が増えることにより、体の新陳代謝が異常に高まる病気です。バセドウ病(自己抗体が甲状腺を刺激して機能亢進を起こす)が多く、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、甲状腺機能性結節などもあります。

症状として、だるい、疲れ易い(全身倦怠感)、ドキドキする(動悸)、息切れ、手の震え(手指振戦)、よく汗をかく(多汗症)、体重減少 などがみられます。

治療としては、抗甲状腺剤(メルカゾール)の内服、手術(甲状腺減量手術)、アイソトープ治療などがあります。これらは、病状や患者さんのライフスタイルなどに合わせて選択します。

 

2) 甲状腺機能低下症

逆に甲状腺ホルモンの分泌が減ることにより、体の新陳代謝が悪くなる病気です。ほとんどが自己抗体による甲状腺の慢性炎症により機能が低下していく橋本病です。

症状として、むくみ(浮腫)、寒がり(体温調節不全)、皮膚の乾燥、集中力の低下、無気力、物忘れ、脱毛 などがみられます。

治療としては、甲状腺ホルモン(チラージン)の内服を行います。

  • 結節性甲状腺腫

甲状腺に出来る腫瘤で、甲状腺機能には影響しないものが多く、体調に変化はないので、頚部のしこりで見つかったり、エコーやCTなどの検査で偶然見つかることがあります。

甲状腺ホルモンを分泌する甲状腺機能性結節(プランマー病)の場合には、甲状腺機能亢進症の症状が現れます。

甲状腺腫瘍には良性と悪性があり、良性には、腺腫、腺腫様甲状腺腫、のう胞などがあります。悪性には、がん(乳頭癌が最も多い、濾胞癌、髄様癌、未分化癌)や悪性リンパ腫などがあります。

良性の場合には体表への突出や食道狭窄、反回神経麻痺などの症状がなければ治療は必要ありませんが、悪性の場合には手術などの治療が必要になります。

しこりを見つけたら、がんの可能性もありますので、画像検査や穿刺吸引細胞診などの検査を受ける必要があります。

◇甲状腺の検査:

甲状腺の機能をチェックするには、①甲状腺機能検査と病因を調べるための甲状腺自己抗体検査が必要です。

結節性甲状腺腫に対しては、良性か悪性かを調べるために、エコー・シンチグラフィ・CT・MRIなどの②画像検査や③穿刺吸引細胞診による病理学的検索が必要です。

  • 甲状腺機能検査

トリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)という2種類の甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモン(TSH)の血中濃度を測定し、甲状腺機能が正常か、亢進しているか、低下しているかをチェックします。

甲状腺自己抗体検査:びまん性甲状腺腫や甲状腺機能に異常があれば、抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)、TSHレセプター抗体(TRAb)などの自己抗体をチェックして、バセドウ病や橋本病の鑑別を行います。

バセドウ病:TRAbが甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンの産生が亢進します

橋本病:TgAb、TPOAbにより甲状腺が破壊され、徐々に甲状腺機能が低下します

  • 甲状腺画像検査

結節性甲状腺腫のスクリーニングには、簡便で身体に負担の少ないエコーが有用です。甲状腺腫大の有無や、腫瘤の性質、血流の程度やリンパ節腫脹の有無などがすぐにチェック出来ます。がんが疑われる場合には、甲状腺シンチグラフィ、CTやMRIなどの検査を適宜追加します。

  • 穿刺吸引細胞診

結節性甲状腺腫が良性か悪性かを鑑別するには、エコーで見ながら細い針を腫瘤に直接刺して、陰圧をかけて細胞を摂取し、プレパラートというガラスの板に摂取した細胞を吹き付けて病理診断します。痛みや苦痛はわずかであり、局所麻酔も必要ありません。

 

当院では乳腺エコー検査時には、必ず甲状腺を検査するようにしています。それは、前任施設で100名の乳腺エコー時に甲状腺を検索すると2名の甲状腺腫瘍性病変が発見されたからです。中には乳がん検診に来られ、乳腺には全く異常はなかったが甲状腺癌が発見されたという方もいます(4名 / 8か月間)。甲状腺は何か症状や異常がないと余り検索しない臓器です。一度、エコーでチェックしておけば安心できます。当院での乳がん検診を受けて、甲状腺も安心してくださいね。