大阪で本町駅から徒歩5分にある乳腺外科クリニック

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新規開院につき1日5名様まで即日の乳がん検診が可能です
大阪市乳がん検診(超音波、マンモグラフィ)が可能です。

院長コラム

【No.13】放射線(治療を含む)に関して

日本においては、戦争や災害による放射線被曝等による不幸な経験があるため、“放射線=体に良くない有害な物”と考えられている方が多いかもしれませんが、正しい知識を持てば、“放射線=有用かつ効果的な物”と考えられます。

ここで説明し、理解を深め、有効な乳がん検診受診につなげて頂ければ幸いです。
後半では、乳がんに対する放射線治療に関しても触れてみます。

放射能って怖いの?

◇1.放射線とは?:
放射線には沢山の種類がありますが、大きくは電磁波と粒子線に分けられます。
電磁波の中で波長が大変短いのがエックス線で、少し長くなると紫外線、赤外線などがあります。
つまり電磁波は体に悪いと言われたりしますが、電磁波全てが身体に悪い訳ではなく、波長の長さによって様々な作用があるという事です。
これに対し粒子線は、粒々の粒子が飛んでいる放射線です。粒子の種類により、電子線、陽子線、中性子線などがあります。陽子線は陽子1つ分の小さい粒ですが、治療に使用する重粒子線は12個分の重い粒です。

◇2.放射線の影響は?:
みなさんは放射線の影響を大変気にされますが、量が問題であって、少なければ問題はありません。
地球上はどこにでも放射線があります。
私達の体からも微量の放射線は出ていますし、地球上で放射線フリーな所はありません。
つまり量が問題なのであって、量が多い場合に影響を気にする必要が生じてきます。
一度に受ける放射線の量が、平均的な自然放射線(年間1.1ミリシーベルト)の100倍以上になると初めて体への影響が出てきます。
ラドン温泉やラジウム温泉では、自然放射線が平均的な地域の10倍位出ていますので注意が必要です。
ただその周辺に住んでいる人の疫学調査では、発がん率が他の地域に比して有意に多いとか少ないとかいうデータは出ていません。
胸部レントゲン写真を例に取ると、1回の撮影で被ばくする放射線量は、飛行機で欧米へ行くことによる自然被ばく量と同程度です。事故などで余計な被ばくをするのは問題がありますが、医療のコントロールされた放射線をきちんと使用するのは、健康の為に必要なのです。

◇3.医療被ばくは問題がある?:
人工放射線の中で一番多いのは医療被ばくです。
日本人は医療被ばくが多いのですが、それは日本の医療が進んでおり、医療制度が整っている証拠です。
日本ではCTを撮るからがんが沢山できるのではなく、CTを撮るからこそがんであると診断出来るのです。
CT装置の普及によりがんの早期発見につながっていますので、日本在住を喜び、必要時に必要な放射線診断を受けるべきでしょう。
ただし無暗に放射線検査を受ける必要はありません。
100ミリシーベルト以下の放射線では、がんを引き起こすというデータはありませんので、例えばCTを年間数回撮っても、それでがんが増えるという事はありません。
放射線は目に見えない為、量が分かりにくいのが心配の一因でしょうが、画像診断レベルの医療被ばくでは全く問題ありませんので皆様ご安心ください。

乳がんに対する放射線治療について

◇4.がん治療に対する放射線治療:
がん治療における3本柱は、
①手術、②薬物療法、③放射線治療です。
世界のがん患者さんの5割以上が放射線治療を受けています。
しかしながら残念なことに、日本は先進国の中で放射線治療利用率が最も低く、3割以下の患者さんしか放射線治療を受けていないのが現状です。
日本人の「放射線アレルギー」がその一因かもしれませんが、放射線治療の恩恵を受けるために、きちんと理解して上手く利用する必要があります。

◇5.放射線で乳がんは治るのか?
放射線で乳がんは治りますが、放射線だけでは手術に劣ります。
手術後に放射線をあてることによりその効果を発揮します。
日本の放射線治療患者さんの2割以上が乳がん患者さんです。
乳がんは、①手術をして、②放射線治療をして、③薬物療法をする=“集学的治療”を行うことが最良の治療と考えられています。

◇6.どうやって放射線で乳がんが治るのか?
がん細胞が放射線で傷ついて死ぬ(DNAが深い傷を受ける)ことにより治ります。
がん細胞は放射線の傷が深くなり易いのに対して、正常細胞は傷つきにくく、傷ついても修復する能力が高いという特徴があります。
毎日少しずつ照射することにより、がん細胞は死に、正常細胞は生き残るという仕組みです。

◇7.年齢制限はあるの?
放射線治療の利点は、機能と形態を温存し、体への負担が少ないことです。
がんの手術や抗がん剤は、年齢によっては勧められない事もありますが、放射線治療には年齢制限はありません。

 

◇8.乳がんに対する放射線治療
乳がんに対する放射線治療には、
①術後に行い、手術との併用で治りをより良くする治療、
②手術出来ないものに対する治療、
③転移の症状を抑える治療があります。温存乳房に対する照射では、4~6メガボルトのエックス線を使用し、総量50グレイ / 5週間や、短期照射(42~43グレイ / 3週間)があります。少しがんが残存している可能性がある場合(切除断端陽性など)や、年齢が若い場合や、再発し易いタイプの場合などでは、腫瘍が元々あった部位に追加照射します(ブースト照射)。温存乳房に対して照射することにより、乳房内再発を抑える事が可能です。
◇9.乳房全摘の場合の照射
乳房全摘後でも、リンパ節転移が多く存在した場合には、胸壁と鎖骨上に術後放射線照射を行った方が再発が抑えられます。乳がんが局所や所属リンパ節に再発してきた場合でも、放射線治療は有用です(60グレイ / 6週間)。

 

◇10.乳がん骨転移・脳転移に対する放射線治療
これらの転移に対する照射は、少ない線量で行います。どちらも血行性転移なので、全身薬物療法が治療の主体となります。放射線治療はあくまで辛い症状を取るための治療なので照射量が少ないのです。骨転移に対しては、30グレイ / 2週間が一般的です。脳転移に対しては、定位照射(ピンポイント照射)が良いか、全脳照射が良いか意見が分かれるところです。最近では、最初はピンポイント照射し、その後残念ながら多発転移になった場合に全脳照射しても認知症などの症状は出ないことが分かってきました。そこで転移が少ない場合には、最初から全脳照射を勧めないようになっています。

 

◇11.今後の展望
乳がんに対する放射線治療は、手術や薬物療法の補助的な役割を果たすことが多いのですが、粒子線治療では手術しないで乳がんを治す臨床試験も行われています。将来的には、早期乳がんは手術ではなく重粒子線治療で治る時代が来るかもしれません。今後の臨床試験の結果が楽しみです。

以上、

①放射線は怖くない、②乳がんに対する放射線治療について色々と説明してみました。
当院では30歳以上の患者様に対しては、マンモグラフィにエコー検査を併用する検診をお勧めしています。視・触診、マンモグラフィ検査、エコー検査を専門医師が一貫して検査することにより、早期に乳がんを発見出来るよう日々努力しています。是非、当院にて乳がん検診を定期的に受診され、早期に乳がんを発見し治療してください。
皆様の“乳腺の主治医”として、これからもお手伝い出来れば幸いです。今後とも宜しくお願い致しますね。

2018.04.09
有本乳腺外科クリニック本町
有本 裕一